2025年3月、ドナルド・トランプ米大統領は 行政命令(Executive Order) を署名し、「Strategic Bitcoin Reserve(戦略的ビットコイン準備金)」および「U.S. Digital Asset Stockpile(米国デジタル資産備蓄)」を設立することを正式に宣言しました。
この動きは、米国政府が暗号資産を「資産保有の柱」として扱う意向を示したものであり、暗号資産市場・規制政策・国際金融の観点で大きな意味を持ちます。
準備金とは何か?
戦略的ビットコイン準備金の内容
- 部分的には、政府が押収・没収したビットコインを元に設立されます。
- この準備金に預けられたビットコインは 売却されず、価値の保存(store of value) のために保有されます。
デジタル資産備蓄(Digital Asset Stockpile)とは
- ビットコイン以外の暗号資産(ETH、XRP、SOL、ADAなど)を含む備蓄を指しますが、米政府によるさらなる購入は当面行われない見込みです。
- この備蓄も主に押収・没収資産から構成されます。
なぜビットコイン準備金を設けるのか?意図と狙い
1. 債務没収資産の有効活用
押収されたビットコインや暗号資産が各省庁に分散していたものを、一元的に管理・保管することで、資産の管理と透明性を高める狙いがあります。
2. 国家戦略資産としての性格
金(Gold)などと同様に“デジタルゴールド(digital gold)” としてビットコインを保有し、国家の準備資産の一つと位置づける動きです。
3. アメリカの暗号資産政策の一貫性と競争力強化
米国が世界の暗号資産・Web3市場で指導的な立場を保つための施策。可能な限り税金負担をかけずに戦略的に暗号資産を保有・運用する仕組みを作ろうという意図があります。
利点と潜在的なリスク
利点
項目 | 内容 |
---|---|
資産の多様化 | 国の準備資産ポートフォリオにビットコインが加わることで、金や外貨だけではない選択肢が増える。 |
価値保存手段 | ビットコインは供給量が限られており、インフレ対策として期待される。 |
押収資産の再活用 | 没収・押収された暗号資産をただ眠らせるのではなく、戦略的資産として活用できる。 |
リスク・懸念点
項目 | 内容 |
---|---|
価格の変動性 | ビットコインは短期では価格が大きく上下する。準備資産としての安定性に疑問を持つ声も。 |
調達の制約 | 政府がビットコインを購入する場合は「税金を使わない」「予算中立(budget-neutral)」という条件付きであり、大きな買い増しはすぐには難しい。 |
規制・法律的な問題 | 押収資産の管理・所有権、税務処理、監査など法制度・運用の仕組みを整える必要がある。 |
実際にどれくらい保有しているのか?数字の見通し
- 米国政府が現在保有している押収されたビットコインの量は概ね 約200,000 BTC と報じられています。
- この準備金は「売却しない」という方針で保管される予定で、公に見える形での短期的な売却や利益追求はしない旨が明言されています。
見通しと今後の動き
より正式な計画の策定
大統領命令が出たものの、具体的な運用計画(どのくらい買い増すか、保管場所、セキュリティ体制など)の策定が進んでおり、年内にもさらなる詳細が明らかになる可能性が高いと分析されています。
市場への影響
発表後、ビットコインやその他暗号資産の価格が上昇する動きも見られており、市場はこの政策を肯定的に評価している部分があります。
世界的な波及効果
他国でも「国が保有するビットコイン準備金」というモデルを検討する動きが出てきており、法制度・政策の競争が加速する可能性があります。
まとめ
トランプ大統領による「Strategic Bitcoin Reserve(戦略的ビットコイン準備金)」の創設は、暗号資産を国家資産の一部として公式に位置づける大きな転換点と言えます。押収資産を活用し、政府が売却せず、価値保存を目的に保有することが政策の柱です。
ただし、価格変動・法制度・運用体制といった課題は残っており、実運用が始まるまでには慎重な対応が求められます。
この動きは Web3/暗号資産の世界だけでなく、金融政策・国際競争・国家の資産管理のあり方にまで影響を及ぼす可能性があります。